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2007年7月28日 (土)

低次元の使い道

これはAir Gardenの夏休みの宿題♪

 あたしの庭に変なものが落ちてくるのだ……。
 いや、その言い方は適当ではない。
 生じる。やってくる。落ちてくる。具現する。ひねり出される。構築される。
 どんな言い方で表そうと、既存ではないものが新たに存在することは変えようがなかった。
 淡雪に似たものであることもあれば、青い透ける蛇みたいなものであることもある。
 それが何か、あたしは知らないけれど、
 無機物に見えるような鱗、ではなく。本当に無機物の生命体みたいなものも庭のあちらこちらで見かけた。
 毎日現れるわけではないが、確実に増えていく。
 のた打ち回るものもあれば、大人しく地面に降り積もり、そのままのものもある。風に飛ばされていくこともある。動きを止める(命を失う?)と塵のようにばらばらになってしまうこともあった。虹色の光を放って、そのためのエネルギーの塊だったといわんばかりに、ゆっくりと消えうせてしまう物体も多い。
 庭の木々はその光を受けて、枯れたり、逆に大きくなったり、大きく変質した。昆虫も歪なものが増えた。
 土はいつしか、それらの屍や降り積もる淡雪もどきに染め上げられ、嵩が上がった。白と紺と赤のマーブルされた粉で覆われてしまっている。
 そこから、健気にも頭を突き出す植物は著しく成長点が狂い、真っ直ぐに伸びなかった。

 あたしは長い間、それらがどこからどうやって生じるのか、わからなかった。
 なぜ、ここに現れるのかも。

 2

 市役所かどこかに問い合わせようとしたこともあったが、根本的な解決にならないことと、このほとんど死に行く生き物らしきものがどういう処遇になるのかを考えてしまうと、あたしには何も出来なかった。
 生き物らしいものは、こちらの物を口にすると半日で死んでしまう。
 だから懸命に、上から降り注ぐ淡雪もどきを食べる。
 雪もどきは発泡スチロールの粒みたいだ。手にとると溶ける。発光しながら。地面に触れても溶ける。
 それだけを食べていても長くは生きない。
 哀れだ。
 あたしはそれをただ見つめ続ける。
 庭への出入り口だった窓は半分まで埋まってしまい、使えなくなった。積もったものは異様に重いし、また軽い。重心が狂っているという問題ではなくて、風で飛ばされることもあるくせに、雪もどきへと深く沈みこむ。
 蛇みたいなものが、太陽に角を向ける。たぶん、あの硬く縞模様のあるそれが、目なのだと思う。耳でもあるのかもしれない。体のあちこちについている。
 時々、蛇は僅かに浮かぶ。
 空を見上げて悲壮な声で泣く。
 それは風の音に近い。

 3

 疑問は疑問のまま。仮定をいくつか生みだしはしたものの、明確な回答も真実もあたしの手にはないままだった。
 庭に降り注ぐ『何か』たちは減少する傾向だったが、それは他の場所で同じようなものが生じるようになったという事実と照らし合わせると、全体としては着実に増えていた。
 深夜番組でこの不思議な存在が取り上げられてからは、一気にあちらこちらで話題になり、週刊誌や新聞、ネットをにぎわせていた。
 そのせいで、一大ニュースであったはずの二次元に通じる穴を開けることが出来たという話題はかすんでしまった。扱いは小さかった。
 簡潔に記された内容はこうだ。そこには地を這う線虫のようなものしかいないから、世界中で悩まされている核廃棄物やゴミ問題に終止符が打てるかもしれない、という。
 あたしはそれを聞きながら、ああなるほどと思った。
 四次元とか五次元とか、高位の次元の者から見れば、あたしたちは線虫程度にしか見えなくて、意思や会話を交わそうなどと思わないのだろう。
 二次元には二次元の重要資源があって、彼らは三次元人が攻め込んできて、自分達の世界を手に入れようとすることに怯えているのかもしれない。私たちがアニメや小説やその他のモチーフとして高次元からの使者に危機にさらされるように。
 でも、実際は。
 あたしは庭に溢れかえる奇妙な無機生命体を見つめた。
 なるほどね。
 あれらは上の世界からのゴミ。ペットを生きたまま捨てているのだろう。いや、もしかしたら、物に魂が入っているのが、そちらの世界の常識なのかもしれない。
 あたしには一つ確信があった。
 この世界を埋め尽くすまでこれらは増えるのだろう……。上の住民はあたしたちが全滅しても気にしないのだから。
 もしかしたら私達は、いや、この世界にある生命そのものが、高次元からの汚染された実験用ラットのなれの果てなのかもしれない。
 あの青い角蛇はペットか。物か。道具なのか玩具なのか。
 もしかしたら。
 あれは流刑に処された罪人かもしれない。
 そして、あたしの庭の青い角蛇は故郷を恋うて今日も空へと声のない咆哮を上げた。

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コメント

すごいなー。こんな短編でストーリーできるんですね(・_・;。
発想も面白いですが、色が奇麗です。

投稿: カジヤ | 2007年8月 1日 (水) 23:08

スミマセンお願いしますw

キャラ名は復活できたら刹那です。

投稿: RedBlood | 2007年8月 5日 (日) 19:35

あ、返信したつもりが。(確認押してしまったらしい。

 レッドさん、了解です♪

 カジャさん、感想ありがとうです♪♪

投稿: 颶風 | 2007年8月10日 (金) 22:54

来てしまいました~
普通に、読みやすく解りやすいストーリーですね。

投稿: 死刻を告る 煉牙 | 2007年8月26日 (日) 22:40

牙さん、いらっしゃい♪
 感想ありがとうです♪
 褒められると嬉しいのです♪

投稿: 颶風 | 2007年8月27日 (月) 23:03

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